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inohota - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2026-10-16 05:00

2026-10-15 Thu

■ #6380. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第8回 --- 英語は1つではない [inohota][ippeiinoue][youtube][inohota_rensai][sociolinguistics][accommodation_theory][audience_design][style][notice][hel_education][inohotanaze]


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 月刊誌『英語教育』(大修館書店)にて,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を連載しています.10月14日発売の11月号に,第8回記事「英語は1つではない ―― 相手と場面で変わる「話し方」」が掲載されました.今回のメイン執筆者は井上逸兵さんです.
 電話に出た瞬間,相手が家族から上司に変わった途端に声のトーンまで変わる,というだれもが経験する現象を入り口に,井上さんは,「英語が話せるようになりたい」というときの「英語」が,まるで1種類しかないかのように扱われがちであることに注意を促しています.私たちは日本語を話すときでさえ,先生と話すとき,友人と話すとき,家族と話すときとで,語彙も文の長さも声の高さも巧みに使い分けています(社会言語学でいう style-shifting).ところが外国語となると,教科書で覚えた1つの話し方をどの相手にも使い続けてしまい,妙に浮いてしまうことが起こりやすいという指摘には膝を打ちました.
 議論の軸となるのは,2つの社会言語学の理論です.1つは Howard Giles らのコミュニケーション適応理論(Communication Accommodation Theory.cf. 「#1935. accommodation theory」 ([2014-08-14-1]))で,相手との距離を縮めたいときにはことばを相手に近づけ(convergence),逆に距離を置きたいときにはあえて離す(divergence)という話し方の調整を説明するものです.もう1つは Allan Bell のオーディエンス・デザイン(audience_design.cf. 「#1934. audience design」 ([2014-08-13-1]))で,直接話しかけている相手だけでなく,傍らで聞いている第3者の存在までもが話し方を左右し得ることを教えてくれます.
 「英語には日本語のような敬語がないのではないか」という誤解にも言及があります.英語にも Could you...? や Would you mind...? のような丁寧表現はありますが,それだけではありません.声の高さ・速さ・強さ・間の取り方といったプロソディ (prosody) が丁寧さの重要な担い手になっている点は,日本語母語話者にはかえって気づきにくい盲点でしょう.「英語ができる」とは,1種類の正しい英語をいつも同じように出せることではなく,相手や場面を見ながら少しずつことばを動かしていける能力そのものだ,と締めくくられています.
 記事の末尾には,恒例の相方からの一言として,私もコメントしています.
 ぜひ全国の書店やオンライン書店にて,『英語教育』11月号を手にとっていただければと思います.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第8回 「英語は1つではない ―― 相手と場面で変わる「話し方」」『英語教育』2026年11月号,大修館書店,2026年10月14日.60--61頁.

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2026-09-30 Wed

■ #6365. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第7回 --- 『英語語源辞典』は英語語彙史の豊かさを伝えてくれる極上の1冊 [inohota][ippeiinoue][youtube][inohota_rensai][kdee][dictionary][lexicography][etymology][kenkyusha][notice][hel_education]


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 月刊誌『英語教育』(大修館書店)にて,同僚の井上逸兵さんとともに連載している「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」.9月12日発売の10月号に,第7回記事「『英語語源辞典』は英語語彙史の豊かさを伝えてくれる極上の1冊」が掲載されました.今回のメイン執筆者は私です.
 きっかけは,井上さんと配信している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」で初めて実現した現地ロケです.1年ほど前,日本の英語辞書出版の老舗,研究社にお邪魔し,私が日頃「世界最強の語源辞典」と激賞してやまない,寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社)の制作秘話を,編纂・出版に携わったプロフェッショナルの方々に直接うかがうという主旨のロケでした.
 取材で明かされたのは,本辞典が研究社における「最後の活版印刷による英語辞書」であるという事実です.気の遠くなるような歳月と職人技が注ぎ込まれた,二度と再現されないであろうものづくりの舞台裏について,記事では詳しく綴っています.続きはぜひ本誌でお確かめください.
 研究社ロケの模様は,「いのほた言語学チャンネル」にて全3回のシリーズ動画としても公開中です.



 なお,今回の『英語教育』の記事でも触れられている,上記の取材を通して立ち上がりつつある新企画については,近々に hellog などでもご報告できればと思っています.
 最後に,井上さんからの一言も紹介します.

堀田さんが「世界一」と激賞する『英語語源辞典』.私もロケで,鉛の活字が並んだ組版の重さと歴史に感銘を受けました.続きはぜひ本誌で!


 『英語教育』10月号,書店やオンライン書店で手にとっていただければ幸いです.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第7回 「『英語語源辞典』は英語語彙史の豊かさを伝えてくれる極上の1冊」『英語教育』2026年10月号,大修館書店,2026年9月12日.44--45頁.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2026-08-24 Mon

■ #6328. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第6回 --- 英語は本当に「直接的」なのか [inohota][ippeiinoue][youtube][inohota_rensai][sociolinguistics][pragmatics][notice][inohotanaze][speech_act]


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 月刊誌『英語教育』(大修館書店)にて,同僚の井上逸兵氏(慶應義塾大学)とともに「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を連載しています.8月12日に発売された9月号に,第6回記事「英語は本当に「直接的」なのか ―― 「察し」を再考する」が掲載されました.
 今回のメイン執筆者は井上逸兵さんです.世間でよく耳にする「日本語は察しの文化,英語ははっきりと意思表示する言語」というステレオタイプを,社会言語学や語用論の視点から鮮やかに切り崩していく,痛快で知的な論考となっています.
 記事ではまず,ビジネスシーンなどでも安易に持ち出されがちな「高コンテクスト/低コンテクスト」という文化の2分法に対して疑問符が投げかけられます.親しい英語母語話者同士の会話がきわめて高コンテクストであるように,どのような言語共同体であっても間接的な伝達や「察し」は存在します.
 本稿の中心となるのは,英語の慣用表現にみられる高度な間接性の分析です.たとえば,相手への押しつけを弱める依頼表現 I don't suppose you could help me with this, could you? や,異議を婉曲に伝える We might want to reconsider that. など,字面通りの意味とは異なる意図を聞き手に推論させる「型」が英語には豊富に備わっています.また,イギリス英語でとりわけ好まれる皮肉や控えめな表現を取り上げ,散々な結果の後に発せられる Well, that went well. のように,表面の意味をひっくり返して理解させる複雑な言語行為の仕組みを解き明かしています.これらは単なる当てこすりではなく,前提を共有する者同士の仲間意識を確かめ合う機能を持つという指摘にも納得させられます.
 さらに興味深いのは,映画翻訳の対照分析です.挙げられている例については記事本体を参照いただければと思いますが,相手への直接的な働きかけを避け,状況を示して判断を相手に委ねる英語のあり方は,まさに「独立」の尊重と「つながり」の維持という2つの対人関係的配慮から生まれているのです.
 記事の末尾には,恒例の「相方からの一言」も付しています.現在,サバティカル研究でイギリスやアイルランドに滞在している私自身の実感としても,人間関係に影響する場面で用いられる回りくどい言い回しや,高度な皮肉には日々遭遇しており,まさに英語における「察し」の奥深さと難しさを肌で感じているところです.
 形式上の直接性と実際のコミュニケーションにおける直接性の違いに目を向けることで,英語と日本語の新たな側面が見えてくる好編となっています.ぜひ全国の書店やオンライン書店にて,『英語教育』9月号を手にとっていただければ.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第6回 「英語は本当に「直接的」なのか ―― 「察し」を再考する」『英語教育』2026年9月号,大修館書店,2026年8月12日.44--45頁.

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2026-07-23 Thu

■ #6296. 「ゆる言語学ラジオさんに説教されましたー!」 --- いのほた最新回 [notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][outreach]



 「#6289. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に3度目の登場」 ([2026-07-16-1]) で紹介したとおり,人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」に井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が3度目(最終回)のご出演をされました.それを受けて,昨日公開された「いのほた言語学チャンネル」の最新回にて,反省会を開きました.「ゆる言語学ラジオさんに説教されましたー!」(20分ほどの動画)をご覧ください.
 今回の動画は,ゆる言語学ラジオでの井上さんの学ラン姿でのコント風ご出演と,堀元さんによる本気の YouTube 論を受けた振り返りトークとなっています.実はこの学園コント企画,2年前の2024年冬に両チャンネルのメンバー4名で会食した折に上がってきたもので,2年越しの計画として結実したものでした.堀元さんの卓越したエンタメ性と魂の入った YouTube 論には,私も大いに刺激を受け,学ぶことばかりでした.
 動画内では,エンタメや編集技術の反省にとどまらず,現代における知のあり方や大学の役割についても議論が及びました.従来のように大学が知の唯一の頂点や中心として君臨する時代は過ぎ去り,現代は分散型の知の潮流の中にあります.そのような状況において,大学や研究者には,知のキュレーターやオーガナイザー,あるいは開かれた知のサークルの1メンバーとしての柔軟な役割が求められているのではないか,と語り合いました.
 現在私が海外に滞在しているため Zoom での遠隔収録となっていること,画面のアスペクト比や編集,音声レコーディングの話題など,技術面での裏話にも触れています.9月末には日本へ帰国する予定で,10月からは再び2人並んでの対面収録をお届けできる見込みです.
 昨年刊行された共著『言語学でスッキリ解決! 英語の「なぜ?」』(ナツメ社)や,雑誌『英語教育』でのコラボ連載など,動画にとどまらない2人の発信活動についても紹介しています.ゆる言語学ラジオの視聴者の方々にも,一味違った角度から英語学・言語学の奥深さを味わっていただければ幸いです.
 おかげさまで「いのほた言語学チャンネル」は開設から4年と5ヶ月が経ち,チャンネル登録者は2万2千人を超えています.今後とも英語学・言語学のおもしろさを伝えていきたいと思います.「いのほた言語学チャンネル」をよろしくお願いします.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』 ナツメ社,2025年.

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2026-07-17 Fri

■ #6290. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第5回 --- 英語と日本語の語彙の3層構造 [inohota][youtube][inohota_rensai][notice][lexical_stratification][lexicology][japanese][loan_word][french][latin][synonym][nazesantangen][contact]


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 7月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の7月号が刊行されました.今年度,同雑誌において,YouTube 「いのほた言語学チャンネル」でご一緒している同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を担当しています.
 最新号の第5回の記事は,私が主に執筆しました.タイトルは「英語と日本語の語彙の3層構造」です.新刊『英語語源で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書,通称『なぜさんたんげん』)の第4章第1節「なぜ英語には類義語が多いのか」で注目した話題をご紹介しています.
 英語は語彙が豊富で,類義語も多い言語です.諸言語の最大の辞書の見出し語数で比べてみても,英語は少なく見積もっても60万語(実際には優にその数倍はあると予想されます)と,他の主要な言語を大きく引き離しています.たとえば「尋ねる」を意味する基本的な動詞に ask がありますが,ほかにも inquire や interrogate といった類義語がいくつも存在します.英語に類義語が多い理由は,歴史における他言語との接触の累積によって,語彙の階層構造ができあがってきたことにあります.
 古英語期には,アングロサクソン人が用いていた本来の英単語 ask だけで,一般的な「尋ねる」の意味がおよそまかなわれていました.しかし,1066 年のノルマン征服(フランス北部のノルマン人がイングランドを征服した事件)の余波により,支配層の言語となったフランス語から inquire という語が英語に流入しました.さらに初期近代英語期に入ると,ルネサンス期を特徴づける古典語への関心の高まりにより,権威あるラテン語から interrogate が持ち込まれました.こうして,文化的香りの高いラテン借用語を頂点とし,その下にノルマン征服を象徴するフランス借用語が位置づけられ,さらにその下に被支配者の言語としての英語本来語が置かれる,ピラミッド風の3層構造が英語語彙において確立したのです.
 記事では,他の具体的な例を列挙し,対応する日本語における語彙階層についても触れました.両言語に見られる語彙の階層構造は,各言語の言語接触の歴史の生き証人なのです.過去から現代に至るまで,ことばがいかに社会の影響を受けて変容してきたのかに関心のある方は,ぜひ今回の『英語教育』の連載記事や新刊『なぜさんたんげん』の扉も叩いてみてください.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第5回 「英語と日本語の語彙の3層構造」『英語教育』2026年8月号,大修館書店,2026年7月14日.44--45頁.
 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

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2026-07-16 Thu

■ #6289. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に3度目の登場 [notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][nazesantangen][politeness][sociolinguistics][honorific][hedge]



 人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回で,井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が,先々週と先週に引き続き3度目(最終回)の出演です.堀元さんが熱血教師,井上さんと水野さんが生徒に扮する,驚きの教室コントのシチュエーションで,堀元先生が「いのほた言語学チャンネル」の編集にアドバイスを加えつつ,YouTuber 論を語るという異色の回です.抱腹絶倒の36分ですが,極上の YouTube 制作技術論かつメディア論となっています.動画公開からの初速も著しく,とんでもなく注目されています!
 今回の動画を視聴して感じたのは,コントの枠を超えて堀元さんの「YouTube 哲学・技術論」の結晶となっていたということです.その裏で,とりわけ印象深かったのは,井上さんが語った知の流れ方の大変化,ひいては学術とメディアの関係の革命という視点です.井上さんによれば,大学という権威の象徴が民を啓蒙するという20世紀型の中央集権的なスタイルは終わりを告げ,21世紀はアルゴリズム型の分散型社会へと移行しています.学術についても,もはや本や雑誌という媒体だけでは立ちゆかない時代が到来していると,私も考えています.
 動画のなかで堀元さんが放った「YouTube は学校じゃねえんだよ」という言葉は,本質を突いています.YouTube には視聴維持率の戦いがあるけれども,授業にはそれがありません,最初の数秒で引きつけ,1文字でも無駄な情報を削り,スマホの画面で省略されない短いタイトルに引きのある情報を詰め込む --- この「手前に引きのある情報をもってくる」という徹底的な技術論は,大学教員が必ずしも得意とするわけではないウケる発信の難しさを浮き彫りにしています.
 今回のゆる言語学ラジオ回で,大学教授が「もっとおもしろくしたい」「YouTuber として数字を出したい」とプロのアドバイスを真摯に仰ぐ姿勢は,きわめて珍しいことです.研究者からの YouTube 等の新メディアでの発信が当たり前になってくる時代は,まだ数年先のことかもしれませんが,間違いなく到来するだろうと思っています.
 井上・堀田は職業 YouTuber ではありません.動画内で堀元さんが「YouTuber は怒りと憎しみを食って大きくなる生き物だ」「視聴者を騙せ」と述べているような方向性を追い求める生き方は不可能です.私たちが目指しているのは,学問の魅力で世の中の人々の知的好奇心を刺激することです.プロ YouTuber のアドバイスはありがたくちょうだいしつつ,基本は学問のおもしろさを元気に長く伝えていく継続性こそが大事なのだろうと,改めて認識した次第です.
 「ゆる言語学ラジオ」のお二方には,言語学という分野をここまで盛り上げ,さらに私たちを収録にお呼びいただいた旨,改めて深く感謝します.抱腹絶倒のコントの裏にある YouTuber 論を,ぜひ皆さんも視聴して味わってみてください.

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2026-07-09 Thu

■ #6282. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に2度目の登場 [notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][nazesantangen][politeness][sociolinguistics][honorific][hedge]



 人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回で,先週に引き続き井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が出演しています.7月7日(火)に配信された「「日本語は遠回りに言う」。それ誤解です。」です.ポライトネスの日英差をテーマとして,お3方で盛り上がっています.水野さんと堀元さんとの掛け合いとともに37分間,画面に釘付けで視聴しました.勉強になるし,おもしろい!
 一般に「日本語は遠回りで直接言わない,英語ははっきり直接言う」というステレオタイプが広く信じられていますが,社会言語学を専門とする井上さんによれば,この認識は「3割ぐらいしか合っていない」(むしろ逆)とのこと.今回の動画は,そんな言語ごとの対人関係調整のメカニズム,すなわち ポライトネス (politeness) をめぐる,目から鱗が落ちる議論が展開されています.
 動画の前半で特に興味深いのは,英語の丁寧さは形式(統語や形態)ではなく音声に依存することが多いという指摘です.英語には日本語のような文法化された「敬語」 (honorific) のシステムが乏しい分,比較的ゆっくり,かつ明瞭に発音することで経緯や丁寧さを表現する特徴があるといいます.文字情報に頼りがちな学校の英語教育ではなかなか教えにくい領域ですが,音声的なアプローチが対人関係に直結している点は刺激的な視点です.
 さらに議論は,英語における他者の領域への配慮へと展開します.日本語は自分の意見を緩めるヘッジ (hedge) を多用して関節的になりますが,英語はむしろ,相手の領域に土足で踏み込まないための固有の装置をもっています.I want to do this. という直接表現を避け,I am just wondering if I could ... のように「くねくね」と迂回する表現や,最上級表現を薄めて one of the best . . . などとする言い方が,その例とのことです.英語話者がいかに相手の独立を重んじているかが,映画の字幕翻訳の事例なども交えて解説されています.
 動画の後半では,ガソリンスタンドや玄関先での「お見送り文化」の日米差や,都市部で見られる「儀礼的無関心」,さらには幼少期の子育てにおける言語化の訓練の差異にまで話が及びます.言葉にしないものを察する日本のコミュニケーション文化と,すべてを言語化する欧米の文化モデルの対比は,堀元さんが取り上げた現代の生成AI時代における言語化のストレスの話題ともリンクし,終始笑いが絶えないながらも深い思索へと誘われます.最後は,井上さんが仕掛けたといってよい学術的な「状況による」ボケの連発に,水野さんと堀元さんが応酬する展開も必見です.
 日英差に関するステレオタイプを突き崩し,言葉の裏にある文化や心理を深く覗き込める,井上さん出演回らしい内容ですので,ぜひ上記の動画を視聴していただければとと思います.来週は井上さん出演の第3回,いよいよ爆発的なファイナル回が予定されています.すでに待ち遠しいです.
 あわせて,井上&堀田のペアで緩く(ときに熱く)言語学を語る「いのほた言語学チャンネル」のほうも,ぜひチャンネル登録をお願いします!

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2026-07-04 Sat

■ #6277. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に登場 [notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][nazesantangen]



 人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回で,「いのほた言語学チャンネル」で私もいつも一緒におしゃべりしている同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が初登場されています! 6月30日(火)に配信された「ラーメン二郎の言語学。「ニンニク入れますか?」を解剖する。」です.お相手の水野さん,堀元さんとの掛け合いが実に見事で,37分の動画を私も笑いながらすっかり一気見してしまいました.
 タイトルにある通り,今回の素材はなんと「ラーメン二郎」です.あの独特な注文システムを言語学の俎上に載せるという引きの強さですが,中身は社会言語学・言語人類学の本格的な導入となっています.お3方が縦横無尽に展開するトークのなかで,「コンテキスト化の合図」「スクリプト」「指標性」,さらには日本語の多種多様な「自称詞」の話題に至るまで,専門用語や概念がぎっしりと詰め込まれています.
 同じ言語学を専門とするといっても,私の主たるフィールドは英語史であり,こうした社会言語学的な領域の本格的な議論は,はるか昔の学生時代に読んだきりのものも多いです.しかし,「いのほた言語学チャンネル」を始めて以来,井上さんの講義を一番近くで聴くことになり,いわば贅沢な「耳学問」を経ていつも復習させてもらっています.学びが本当に大きいです.
 今回の「ゆる言語学ラジオ」の動画の最後では,井上さんが「いのほた言語学チャンネル」の宣伝をしっかりと差し込んでくれています.そちらの「いのほた」ですが,現在私が在外研究で海外に身を置いている関係上,収録の都合もあり,目下は週1回の更新ペースで不定の曜日にお届けしています.
 「いのほた」の最新回として上がっている動画は,私がメインで「本は読むのも作るのも楽しい!出版には未来がある!」として熱く語っています.去る6月10日に刊行され,ありがたいことに早速増刷が出荷となった新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の制作舞台裏や流通の話題に触れています.出版不況と言われる時代にあっても,やはり「本づくりには夢がある」という著者としての思いを込めた回ですので,ぜひ合わせてご視聴いただき,チャンネル全体を応援していただければ幸いです.
 さらにもう1つ,井上&堀田ペアの活動として,大修館書店が刊行する月刊誌『英語教育』にて,「いのほた言語学チャンネル presents 英語を深める社会言語学・英語史の視点」という連載記事を展開しています.基本的には,2人が毎月交代でメイン記事を執筆し,相方がコメントを寄せるという,まさに「いのほた」の雰囲気を誌面で再現するコンセプトです.現在発売中の7月号(6月12日刊行)は井上さんがメイン担当で,タイトルは「「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較」という,これまた魅力的な社会言語学のトピックです.
 今回の「ゆる言語学ラジオ」への井上さんの出演回は来週と再来週も続く予定と聞いています.ぜひ今後の展開にも大いに期待したいですね!

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2026-06-30 Tue

■ #6273. 『なぜさんたんげん』制作から学んだ「本は皆で作るもの」 --- 「いのほた言語学チャンネル」最新回 [inohota][nazesantangen][notice]



 一昨日の6月28日,「いのほた言語学チャンネル」の最新回「本は読むのも作るのも楽しい!出版には未来がある!」が公開されました.
 今回の動画では,今月10日に刊行され,おかげさまで発売前増刷を達成した新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の制作体験の舞台裏を,相棒の井上逸兵さんとともに熱く語っています.今回は本の内容そのものというよりも,「本を作る,売る,届ける」という出版メディアのからくりや裏側にスポットを当てた,メディア論的な対談となっています.
 今回の本は,6年ほど担当の編集者さんと二人三脚で文体調整や構成を練り上げてきたものであり,本の半分は編集者さんの作品であるといっても過言ではないほどのコラボレーション作品となりました.著者の名前が前面に出る本というメディアも,背後には編集長,校正・校閲の方々など多くの人々が関わっており,まさに「皆で担ぎ上げて作るもの」なのだと改めて実感させられました.
 対談の後半では,井上さんより,英米における日本文学の翻訳を小規模な出版社が仕掛けてブームを起こしている興味深い現象が紹介され,出版不況と言われる現代における「小さな出版」の可能性について議論が及びました.また,新聞の書評欄の広告出稿の変化など,時代の移り変わりを示す生々しい業界事情に触れつつ,これからのアカデミアや出版界を盛り上げるための「ソーシャルメディア」「出版」「リアルイベント」という3本柱の重要性について熱く語り合っています.
 本というメディアの特性や,言葉が読者に届くまでのダイナミズムに関心のある方は,ぜひ動画をご視聴ください.動画を視聴し終わった後には,本書やリアル書店の棚の見え方が少し変わってくるかもしれません.
 本書の刊行を支えてくださったNHK出版の編集や営業の皆さん,熱心に店頭に並べてくださっている書店員の皆さん,そして様々な形で応援し,本書を手に取ってくださっている読者の皆さんに,この場を借りて心より深く御礼申し上げます.
 『なぜさんたんげん』は,昨日,元気に2刷出来しています.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

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2026-06-25 Thu

■ #6268. 「英語語源辞典通読ノート」の lacolaco さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています! [notice][voicy][heldio][helwa][inohota][kenkyusha][link][kdee][lacolaco][helkatsu][hel_education][helmate]



 英語史を広める活動「hel活」 (helkatsu) の周辺が実に熱くなっています.本ブログでも要注目としてたびたび紹介してきた,heldio/helwa のコアリスナーでヘルメイトの lacolaco さんが,「英語語源辞典通読ノート」シリーズにて,目下 D の項目をひた走っています.
 驚くべきは,その圧倒的な継続力のみならず,そこに込められた「hel活」スピリットの進化にあります.最新の2つの記事,すなわち6月13日公開の desire -- desk,および6月20日公開の despite, develop, device を拝読し,胸が熱くなりました.
 この最新の2回において,lacolaco さんは貴重で有用な,新しい試みを始められています.前者では desk を,後者では device をサンプルとして取り上げ,『英語語源辞典』初心者に向けて,同辞典の読み方をきわめて丁寧に解説してくれているのです.同辞典特有の専門記号,略称,句読点などの1つひとつにまでこだわり,それが何を意味しているのかを噛み砕いて説明しているセクションは,『英語語源辞典』を所有していながらも,専門的すぎて使いこなせていなかった多くの方々にとって福音となるはずです.
 これは,1ヶ月ほど前の hellog 記事「#6232. 『英語語源辞典』を読みこなせるようになりたい方へ」 ([2026-05-20-1]) における問題提起を受けての,lacolaco さんによる見事なイニシアチブであり,実践です.さらに先立つ「いのほた言語学チャンネル」の研究社ロケ回でも話題となったように,『英語語源辞典』は世界最高峰の辞典でありながら,一般読者がその価値を本格的に享受するためには「読み解き方の手ほどき」がどうしても必要でした.まさにそのギャップを埋める体系的なガイドを,1人のヘルメイトが自らの note で,これほどハイレベルな形で実現してくれたわけです.これぞ草の根から湧き上がる純粋なhel活であり,hel活コミュニティのつながりが生んだ貴い果実です.
 この丁寧な解説は,同辞典の魅力と威力をお茶の間に届ける素晴らしい踏み台となるはずです.一般の英語学習者の皆さんにとどまらず,同辞典の出版元である研究社の方々をはじめ,英語史の研究・教育に携わる専門の関係者の皆さんにも,大いに注目していただきたい画期的な試みです.ぜひ lacolaco さんのノートを訪問し,『英語語源辞典』の読み方解説を味読してみてください

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2026-06-16 Tue

■ #6259. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第4回 --- 「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較 [inohota][youtube][inohota_rensai][speech_act][sociolinguistics][notice][inohotanaze][historical_pragmatics][pragmatics]


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 6月12日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の7月号が刊行されました.今年度,同雑誌において,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を展開しています.今回の第4回の記事は井上さんによる言語行為の日英差に迫っています.「「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較」です.
 今回の井上さんの論考は,日常の何気ない表現に潜む語用論の話題をおもしろく掘り下げています.たとえば,誰かが転びそうになった際,日本語ではとっさに「あぶない!」という言葉が出ます.これは形式としては危険な状況の描写にすぎません.ところが,英語では同様の場面で Watch out! と表現するのが一般的です.日本語が状況を言うことで相手を動かそうとするのに対し,英語は相手にしてほしい具体的な行為を指示することで相手を動かそうとする傾向が見られます.この対比は「うるさい!」に対する Shut up! や Be quiet!,「じゃまだ!」に対する Move! などの日常表現,さらには山手線のホームの「降車位置」という表示に対する英語の Keep out という指示のあり方にまで通底しています.
 なぜこのような言語行為 (speech_act) の違いが生まれるのかについて,井上さんは2つの切り口から整理されています.この最も重要なポイントについては,ぜひ雑誌を手に取って連載記事にてお読みください.
 社会言語学 (sociolinguistics) 的に重要なのは,こうした違いを「日本人は察しの文化で,英語圏は直接的だ」といった国民性や民族性の違いに雑に単純化しないという点です.酒場でよく耳にする「日本は島国だからね」という言説への鋭いツッコミを披露されていますが,これには思わずニヤリとしてしまいました.
 最後に,私も少しコメントを寄せています.近年,英語史の分野では歴史語用論の研究が非常に盛んです.今回のトピックはその角度から見ても示唆に富んでいます.英語は歴史を通じて直接的な行為の要求ばかりを好んできたわけではありません.たとえば,Will you be quiet? のように相手の意志の確認を通じて間接的に依頼や軽い命令を表わす言語行為の型も,後期中英語期以降のことではありますが,発達してきています.つまり,英語もまた直接命令するのではない「新たな間接性の型」を自ら開拓してきた歴史をもっているのです.共時的な社会言語学の知見と通時的な英語史の視点が交差する speech act は,エキサイティングな話題ですね.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第4回 「「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較」『英語教育』2026年7月号,大修館書店,2026年6月12日.44--45頁.

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2026-05-20 Wed

■ #6232. 『英語語源辞典』を読みこなせるようになりたい方へ [voicy][heldio][inohota][kenkyusha][notice][link][kdee][hel_education][khelf][helwa][asacul]


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.



 昨日の記事「#6231. 研究社ロケ in 「いのほた言語学チャンネル」の第2弾と第3弾が公開されています」 ([2026-05-19-1]) でご案内した研究社ロケ回の第3弾では,『英語語源辞典』の読みこなしについても話題となりました.
 編集者の星野龍さん,中川京子さん,青木奈都美さんとのお話しのなかで,『英語語源辞典』(や OED の語源関係欄)は,情報がぎっしり詰め込まれており,専門的な記号や略称も多いので,一般読者は読みこなすのが難しい.一般の英語学習者が,同辞典の良さを本格的に味わおうと思えば,読み解き方の手ほどきが必要なほどだ.そのための講座やガイドブックがあるとよい,という趣旨のお話しも出ました.
 一般の方々にとって『英語語源辞典』を使いこなすのが容易ではないことは,同辞典を激推ししてきた私自身も気付いており,そのためにいくつかの活動もしてきました.1つは,動画内で私自身も触れている通り,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のなかで,まさに『英語語源辞典』読み解き講座に近い配信回をしばしばお届けしてきました.英語史を専攻する大学院生などとともに,同辞典の読み方を解説したり,議論したりしています.以下に主だった回を一覧します.

 ・ 2023年10月23日 heldio にて「#875. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (1) --- 藤原くんと foot を語る」が配信され,藤原郁弥さんとの画期的なシリーズの幕開きとなる.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第2位に入った.
 ・ 2023年10月26日 heldio にて「#878. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (2) --- 藤原くんと foot を語る」が配信される.
 ・ 2023年11月8日 heldio にて「#891. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (3) --- khelf 藤原くんと marble を語る第1弾」が配信される.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第9位に入った.
 ・ 2023年11月11日 heldio にて「#894. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (4) --- khelf 藤原くんと marble を語る第2弾」が配信される.
 ・ 2023年11月14日 heldio にて「#897. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (5) --- khelf 藤原くんと marble を語る第3弾」が配信される.
 ・ 2023年12月15日 heldio にて「#928. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (6) --- khelf 藤原くんと2重語 compute/count を語る」が配信される.
 ・ 2024年1月31日 heldio にて「#975. 『英語語源辞典』の収録語彙」が公開される.
 ・ 2024年2月2日 heldio にて「#977. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (7) --- khelf 藤原くんと同音異義語 bank の項を精読する」が配信される.
 ・ 2024年2月3日 heldio にて「#978. 『英語語源辞典』の語義・初出年代 --- khelf 藤原くんと凡例を読もう」が配信される.凡例を熟読するという稀代な企画がスタート.
 ・ 2024年6月6日 heldio にて「#1101. 『英語語源辞典』凡例読みシリーズ with 藤原郁弥さん&青木輝さん」が配信される.
 ・ 2024年07月26日 heldio で「#1153. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (8) --- khelf 藤原くんと king の項を精読する」が公開される.
 ・ 2024年08月24日 heldio で「#1182. 【緊急のご報告】研究社『英語語源辞典』新装版が重版決定!」が公開される.
 ・ 2024年09月23日 heldio で「#1212. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 --- 「英語史ライヴ2024」より」が公開される.
 ・ 2024年10月21日 heldio で「#1240. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (2) --- KDEE の編集方針を理解しよう」が公開される.
 ・ 2024年10月26日 heldio で「#1236. mine を『英語語源辞典』で読み解く」が公開される.
 ・ 2024年11月14日 heldio で「#1264. 『英語語源辞典』通読はキツい,無理!」が公開される.
 ・ 2024年11月16日 heldio で「#1266. chair と sit --- 『英語語源辞典』精読会 with lacolaco さんたち」が公開される.
 ・ 2024年12月26日 heldio で「#1306. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (3) --- 印欧語比較言語学の学史をたどる」が公開される.
 ・ 2025年04月25日 heldio で「#1426. 『英語語源辞典』をランダム読み --- khelf メンバーとの思いつき企画」が公開される.

 また,私は数年来朝日カルチャーセンター新宿教室にて定期的に英語史関連の講座を開いてきましたが,とりわけ2024年度の毎月の講座では,「語源辞典でたどる英語史」をシリーズタイトルとして掲げて,事実上の『英語語源辞典』読み解き講座を展開していました.現行の毎月講座でも,『英語語源辞典』は常に参照し,その一部を精読するということを続けています.今週土曜日に予定されている5月回でも,もちろん参照する予定です(先日の hellog 記事「#6228. 「again を探って中英語原文の世界へ」 --- 今年度の朝カル英語史シリーズ第2回」([2026-05-16-1]) をご参照ください).
 ほかには,上記 Voicy heldio から派生したプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」や khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバーによる,『英語語源辞典』をめぐる様々な活動も,『英語語源辞典』の読みこなしに貢献しています.とりわけ同辞典の通読に挑戦されているお2人 lacolaco さんによる note 上の「英語語源辞典通読ノート」や寺澤志帆さんの連載企画「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」は要注目です.ari さんによる『英語語源辞典』で一人遊びするアプリ「#266【KQ2】ゴラクエを update して遊ぶ!!」も参照ください.
 上記のように,これまでにも仲間たちと私とで様々な活動を展開してきましたが,『英語語源辞典』を読みこなせるようになるための「体系的」な講座やガイドブックなどは,確かに存在しませんでした.どのくらいの需要があるのか,という問題はありますが,今回のいのほた動画で触れている通り,一考の余地はあるかもしれません.
 読者の皆さん,需要はありますか?

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

Referrer (Inside): [2026-07-08-1] [2026-06-25-1]

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2026-05-19 Tue

■ #6231. 研究社ロケ in 「いのほた言語学チャンネル」の第2弾と第3弾が公開されています [kenkyusha][inohota][notice][lexicography][kdee][hee]



 5月1日に「#6213. 研究社ロケ in 「いのほた言語学チャンネル」が公開されました」 ([2026-05-01-1]) で第1弾をご案内した研究社ロケシリーズが,第2弾,第3弾と続いています.

 【第2弾】 「最後の活版印刷の『英語語源辞典』(研究社)の編集に辞書作りプロたちはどう挑んだか?」(5月6日公開)
 【第3弾】 「世界一の『英語語源辞典』はどのようにできあがったかー研究社さんロケ第3弾!」(5月17日公開)

 飯田橋の研究社のビルにお邪魔しての,いのほたとしては初のロケのシリーズとなっています.私が各所で激推ししている,寺澤芳雄(編)『英語語源辞典』(研究社,1997年;新装版2024年)の編集・印刷の様子を,出版社の中の方々に直接うかがう貴重な機会となりました.
 第2弾では,『英語語源辞典』の編集を担当された中川京子さんと根本保行さんに主にお話しいただきました.お2人は,足掛け18年にも及ぶというこの壮大なプロジェクトの途中に,初校の段階から参加されていました.当時はまだ執筆された原稿を印刷所に回し,ゲラをやり取りするという伝統的な辞書作りの工程を踏んでいましたが,時代はアナログからデジタルへの過渡期に位置していました.根本さんによれば,かつては印刷所の方々が「最後の門番」として大きな判断力を持ち,全体のペースを調整する役割を担っていたとのことです.現場のプロ同士が呼吸を合わせながら,1996年夏という厳しいデッドラインに向けて一丸となって突き進んだ熱量は,今ではなかなか味わえない辞書編纂の醍醐味を感じさせます.辞書作りという知の集積がいかに泥臭く,かつ精緻な現場作業に支えられていたのかを物語る貴重な証言の数々です.
 引き続き,第3弾では,編集者の青木奈都美さん,中川京子さん,星野龍さんにお話しをうかがっています.ここでは,1ユーザーとして私が本辞典をいかに愛用しているかという話から始まり,とりわけ青木さんがいかに語源や英語史と付き合ってきたかという話題に移りました.特に印象的だったのは,語源や英語史を学ぶ意義についての議論です.語源を学ぶことは,単に英単語を暗記するための手段ではありません.青木さんの言葉を借りれば,運用面ではネイティブに追いつくのが難しいとしても,語源に関しては学習者もネイティブも平等です.英語が世界語として勢力を拡大する以前の,イングランドの小さな島国の言語であった頃の姿が見えてくるという視点は,私たちが英語史を学ぶ意義を教えてくれます.『英語語源辞典』やそこから派生したといってよい『英語語源ハンドブック』の魅力は,そうした歴史の深みを,日常語から専門語まで一貫して提供してくれる点にあります.
 良い語源辞典は,一度手に取れば一生の友となります.今回の動画を通じて,編纂者たちの情熱と,辞書の背後に広がる英語史の豊かさを感じ取っていただければ幸いです.語源や英語史のおもしろを再認識し,ぜひ皆さんの手元に1冊,この世界一の『英語語源辞典』を置いてみてください.

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

Referrer (Inside): [2026-05-20-1]

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2026-05-17 Sun

■ #6229. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第3回 --- 英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる [inohota][youtube][inohota_rensai][hel_education][hel][sociolinguistics][notice][inohotanaze][comparative_linguistics][philology][historical_linguistics][language_change][voicy][heldio]


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 5月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の6月号が発売されました.今年度,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに配信している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」をベースとして,連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を始めています.
 連載第3回となる今回は,私がメイン執筆者として「英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる」を書いています.前号の井上さんによる「社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」への返答のような形になります.井上さんからの温かいコメントも最後に付いた文章です.
 今回の記事タイトルは,前号の井上さんの記事タイトルへのオマージュ(いや,パロディというべきでしょうか)として生まれたものです.井上さんがそう来るなら,私としては「英語史の3つの扉」しかない,と直感し,先にタイトルが決まりました.では,その3つとは何か.それは後から考え出すという,いかにも「いのほた」らしいライブ感のある記事執筆です.
 記事では,英語史への3つの入口として,「比較言語学」 (),「文献学」 (philology),「歴史言語学」 (historical_linguistics) を取り上げています.第1の扉「比較言語学」では,文献に残らない祖語の姿を「再建」 )という手法によって浮かび上がらせる営みを論じました.第2の扉「文献学」では,1文字・1語に宿る言語的・社会的文脈を丁寧に読み解くことの醍醐味を述べています.そして第3の扉「歴史言語学」では,言語変化 (language_change) のメカニズムを体系的に追う視点を紹介しました.3者はそれぞれ異なる分野でありながらも「社会と言語の接点」という点で通底しています.この締めくくりによって,社会言語学を専門とされる井上さんとのコラボ的なエッセイとして仕上げることができたかな,と感じています.
 なお,本連載は月々メイン執筆者を交代するスタイルをとっており,サブの側がコメントを数行添える形式をとっています.今回,井上さんからは「英語史ってロマンですねー」という言葉をいただきました.「いのほた言語学チャンネル」のゆるいライブ感を,誌面でも少しずつ体現できているとすれば,望外の喜びです.
 本連載記事と関連して,heldio でも先日「#1812. 英語史の3つの扉 --- 『英語教育』の「いのほた連載」第3弾より」としてお話ししました.あわせてお聴きください.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第3回 英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる」『英語教育』2026年6月号,大修館書店,2026年5月14日.44--45頁.

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2026-05-01 Fri

■ #6213. 研究社ロケ in 「いのほた言語学チャンネル」が公開されました [kenkyusha][inohota][notice][lexicography]



 4月28日(火),「いのほた言語学チャンネル」の最新回として「初ロケ!最後の活版印刷の英語辞書(『英語語源辞典』(研究社))をめぐる辞書編纂者たちの矜持」が公開されました.
 今回は「いのほた」としては初となるロケ企画で,英語学習者・研究者なら誰もがお世話になっているであろう英語辞書作りの老舗,研究社さんにお邪魔してきました.私自身,学生時代より研究社の辞書をボロボロになるまで引いてきた人間ですので,飯田橋の本社ビルにお邪魔してのロケには感慨深いものがありました.
 今回の動画の主役は,私が各所で激推ししている,寺澤芳雄(編)『英語語源辞典』(研究社,1997年)です.2024年には新装版も出ています.私が2023年7月18日に「ゆる言語学ラジオ」の動画「英単語帳の語源を全部知るために,研究者を呼びました【ターゲット1900 with 堀田先生】#247」に出演した際,この辞典の魅力を熱弁したところ,1万円(+税)という高額な辞書にもかかわらず Amazon 等で爆発的に売れるという出来事が起こりました.それをきっかけに,研究社の公式 note 「研究社ノート」にて「『英語語源辞典』と活版印刷裏話」という記事で,同辞典のメイキング秘話が公開されるなど,注目度が増してきました.今回のいのほた動画は,研究社の関係者にもご出演いただきまして,改めて同辞典のアツさを語ろうというロケ企画の第1弾です.
 動画では,この辞典の編集に携わられた星野龍さん,中川京子さん,そして関連書として昨年出版された『英語語源ハンドブック』の編集担当である青木奈都美さん,さらに元研究社印刷社長の小酒井英一郎さんという,辞書作りのプロフェッショナルの方々にお集まりいただきました.
 特筆すべきは,この『英語語源辞典』が「最後の活版印刷による英語辞書」であるという事実です.1980年の企画開始から1997年の刊行まで,実に17年という歳月が費やされました.その間,時代は急速にデジタル化へと舵を切っていましたが,本辞典は一貫して鉛の活字を 1本ずつ組み上げる活版印刷の手法で制作が進められました.
 小酒井さんに見せていただいた実際の組版の重みには,言葉を失いました.1ページ分の文字を物理的な鉛の塊として並べ,それを約1,80ページ分も保管しておく必要があるのです.辞書特有の小さな8ポイント活字(4mm 弱)を,職人が1文字ずつ拾い,並べ,修正していくプロセスは,まさに職人芸です.
 星野さんのお話によれば,初期のデジタル組版では,この活版印刷が持つ独特の文字の美しさや行の締まりを再現できず,新時代の波に直面した編集者たちは深い違和感を抱いたといいます.デジタルでは機械的に文字を並べることはできても,職人が長年の経験で培った読みやすさのための微調整までは再現できなかったのです.この辞典には,日本の印刷技術が到達した最高峰の輝きが,物理的に刻み込まれていると言えます.
 現在は効率化とコストの観点から,このような贅沢な本作りは二度と不可能だというお話しでした.しかし,だからこそ,今私たちの手元にあるこの『英語語源辞典』は,単なる英語語源に関する情報の宝庫である以上に,20世紀後半の出版文化が残した金字塔としての価値を持っていると言えます.
 辞書は引ければよい,という考え方もあります.しかし,その背後にある編纂者たちの矜持と,職人たちの果てしない手仕事の積み重ねを知ると,ページをめくる指先にも自然と力が入るというものです.研究社という出版社の,このプロフェッショナルなこだわりこそが,日本の英語教育と英語学を支えてきたのだと再確認しました.
 このロケ動画は今後数週間にわたって続編が公開される予定です.皆さんもぜひ,動画を通じて辞書という小宇宙の奥深さに触れてみてください.そして,もし本棚にこの辞典がないのであれば,入手することをお勧めします.単なる買い物ではなく,歴史の証言者を手元に置くという意味を持ちます.
 今回の動画内容と関連する過去の hellog 記事は多岐にわたります,以下の記事をリンク集への起点ととらえていただき,ジャンプしていただければと思います.

 ・ 「#5210. 世界最強の英語語源辞典 --- 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)」 ([2023-08-02-1])
 ・ 「#5261. 研究社会議室での3回にわたる『英語語源辞典』をめぐるインタビューが完結」 ([2023-09-22-1])
 ・ 「#5436. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年3月15日版」 ([2024-03-15-1])
 ・ 「#5522. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年6月9日版」 ([2024-06-09-1])
 ・ 「#5553. 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)の新装版 --- 「いのほた言語学チャンネル」でも紹介しました」 ([2024-07-10-1])
 ・ 「#5856. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2025年5月9日版」 ([2025-05-09-1])

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

Referrer (Inside): [2026-05-19-1]

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2026-04-22 Wed

■ #6204. 「いのほた言語学チャンネル」最新回で『英語史新聞』第13号と『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』をご紹介 [inohota][hel_herald][khelf][kochushoho][kenkyusha][notice]



 4月19日に配信された「いのほた言語学チャンネル」の回は,「#413. ニッチな英語史を人が集まるマーケットをにした男」です.内容としては,khelf(慶應英語史フォーラム)による『英語史新聞』第13号発行のお知らせ,およびその1面記事で大々的に取り上げている新刊の『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)のご紹介となっています.
 さて,今回の動画でご紹介した『英語史新聞』第13号は,実に9ヶ月ぶりの発行となりました.khelf のゼミ生たちが編集から企画まで主体的に関わって作り上げた力作です.
 第1面では,2026年2月に研究社より新装復刊された名著,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を紹介しています.この本は90年以上前に書かれた原稿を下敷きにしており,途中で大きな改編がなされながらも,日本における古英語・中英語の入門書の先駆けとも言える存在です.最近の語学書のような手取り足取りの親切さはありませんが,自ら辞書(グロッサリー)を引いて読み解くという,質実剛健な独学自習のスタイルが貫かれています.この媚びない潔さが,若い世代の読者にはかえって新鮮に映り,没入感を生むという可能性があります.
 第2面以降も,現役の学生たちによるフレッシュな記事が満載です.

 ・ foot の複数形がなぜ feet になるのかという素朴な疑問への歴史的アプローチ
 ・ 聖書翻訳の比較から見える言葉の意味の変遷
 ・ 福元広二先生(法政大学)へのインタビュー(英語研究者のキャリアパス紹介)
 ・ 英語の始まりは何年か,という問いに迫るクイズとその回答・解説

 古英語や中英語という一見ニッチな分野であっても,そこには現代の英語を理解するためのヒントが驚くほど詰まっています.ぜひ直接『英語史新聞』第13号をお読みください.
 今回の「#413. ニッチな英語史を人が集まるマーケットをにした男」という標題については,井上逸兵さんが,『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を激推ししている私のことをこのように評してくださっているということなのですが,実際上はマーケットになっているのかは分かりません.ただ,新聞作りに関わった学生たちの熱意や,伝説的入門書を復刊させた出版社のご尽力,そして何より日々ブログや動画をチェックして英語史分野に関心を寄せてくださる読者の皆さんの支持があってこそ,この分野が息づいているのだとは感じています.関心をお持ちの方が少ないながらもいらっしゃれば,一緒に楽しんで行ければよいな,というつもりで「hel活」している次第です.
 ぜひ『英語史新聞』第13号にアクセスし,英語史の奥深い世界に触れてみてください.そして,関心を持たれた方はぜひ『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)で英語史や古英語・中英語への第一歩を踏み出していただければ幸いです.

 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.

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2026-04-19 Sun

■ #6201. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第2回 --- 社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか [inohota][youtube][inohota_rensai][hel_education][hel][sociolinguistics][notice][inohotanaze][variation][voicy][heldio]


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 4月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の5月号が発売されました.今年度,同雑誌において,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,新しい連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を始めています.今回は連載第2回となり,井上さんがメインとなり「社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」と題して,社会学の入門となる文章を書かれています.最後に,私も少しコメントしています.
 前回の4月号(第1回)は,イントロとして「いのほた」対談形式でお届けしましたが,今月号からは交互にメインライターを務める趣向です.今月は井上さんが「社会言語学」 (sociolinguistics) のエッセンスを鮮やかに切り出しており,来月は私が「英語史」の観点から主筆を担当し,お互いに数行のコメントを寄せ合うという,まさに YouTube チャンネルの空気感を紙面に再現するような構成になっています.
 今回の井上さんの記事の白眉は,「3つの扉」という切り口です.社会言語学という広大な領域を,(私流の解釈によれば) (1) 変異,(2) 人間関係,(3) 空気という3点で整理されています.人はことば「を」どう使うかという受動的な記述にとどまらず,副題にある通り,人はことば「で」何をしているのかという能動的・積極的な側面を強調されているのが,実に井上さんらしい視点だなと感じます.
 とりわけ第1の扉である「変異」 (variation) は,言語変化を扱う歴史言語学や英語史と極めて親和性が高い領域です.歴史的に見れば,ある時代の「変異」が積み重なり,やがて「変化」へと結びついていくからです.この点については語りだすと止まらなくなるのですが,ぜひ本誌をお手に取っていただければと思います.
 実をいえば,この連載は YouTube の「いのほた言語学チャンネル」と同様,あえてガチガチに12回分の計画を固めすぎないようにしています.もちろん大まかな構想はありますが,読者の皆さんの反応や,相方の出方を伺いながら,その都度フレキシブルにテーマを選んでいくという,ライブ感を大切にするスタイルをとっています.井上さんがこう来たならば,次は私はこう返そう……というインタラクションこそが,この連載の醍醐味と言えると思います.次回の6月号では私が主役を務める番ですが,今回の井上さんの「3つの扉」に触発されて,その英語史版をパロディとして書いてみようと思っています.社会言語学と英語史がどのように交差し,響き合うのか.まずは発売中の5月号にて,井上さんによる社会言語学の切り方を堪能してください.
 本連載に関連して,heldio でも「#1783. 『英語教育』の「いのほた連載」第2弾」としてお話ししています.あわせてお聴きいただければ.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第2回 社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」『英語教育』2026年5月号,大修館書店,2019年4月14日.44--45頁.

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2026-04-16 Thu

■ #6198. あまり知られていない母語英語変種 [toc][variety][world_englishes][enl][lesser-know_varieties][caribbean][inohota][youtube]



 先日公開された「いのほた言語学チャンネル」の動画では,「#411. 日本でピジン英語が話されていたのはあの島」と題して,小笠原群島の英語に焦点を当てた.関連する話題は,hellog としても「#2559. 小笠原群島の英語」 ([2016-04-29-1]),「#2596. 「小笠原ことば」の変遷」 ([2016-06-05-1]),「#3353. 小笠原諸島返還50年」 ([2018-07-02-1]) で取り上げてきたので,そちらも参照されたい.
 動画で紹介した本では,小笠原群島の英語についての言及は軽くなされているのみだが,それに類する世界であまり知られていない英語母語変種 (lesser-know_varieties) が多く紹介されている.目次がそのままそれらの変種の一覧となっているので,それを挙げておきたい.



1. Introduction
   Part I: The British Isles
2. Orkney and Shetland
3. Channel Island English
   Part II: The Americas and the Caribbean
4. Canadian Maritime English
5. Newfoundland and Labrador English
6. Honduras/Bay Islands English
7. Euro-Caribbean English varieties
8. Bahamian English
9. Dominican Kokoy
10. Anglo-Argentine English
   Part III: The South Atlantic Ocean
11. Falkland Islands English
12. St Helenian English
13. Tristan da Cunha English
   Part IV: Africa
14. L1 Rhodesian English
15. White Kenyan English
   Part V: Australasia and the Pacific
16. Eurasian Singapore English
17. Peranakan English in Singapore
18. Norfolk Island and Pitcairn varieties




 英語は大言語であるとはいえ,母語変種に限っても広く知られていないものが多々あることがわかるだろう.


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 ・ Schreier, Daniel, Peter Trudgill, Edgar W. Schneider, and Jeffrey P. Williams, eds. The Lesser-Known Varieties of English: An Introduction. Cambridge: CUP, 2010.

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2026-03-18 Wed

■ #6169. 「英語史の塔」の話題がちらほら [tower_of_hel][hel_education][kochushoho][hee][kdee][hajimetenoeigoshi][kenkyusha][helkatsu][note][inohota][voicy][heldio][helkatsu][helwa][helmate]


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 1ヶ月前の2月18日は「英語史の塔」が建った記念日です.私のhel活の歴史において,おおいに注目すべき出来事でした.この塔の建設の経緯は本ブログを含め様々な媒体で公開してきました.
 この1ヶ月の間,「英語史の塔」がジワジワと知られるようになってきました.note 上で塔に反応くださる英語史ファンの方も現われており,元気づけられている次第です.「英語史の塔」が言及されているウェブ上の主要コンテンツを,いくつか挙げておきます.

 ・ 堀田による note 記事「「英語史の塔」が建設されました」(2月18日)
 ・ hellog 記事「#6150. 「英語史の塔」が建っています」 ([2026-02-27-1])
 ・ heldio 配信「#1736. この春は英語史を始めよう! --- 「英語史の塔」の登り方」(2月28日)
 ・ Grace さんによる note 記事「「英語史の塔」建設により見えるもの」(3月1日)
 ・ heldio 配信「#1735. 「英語史の塔」をご覧ください」(3月1日)
 ・ hellog 記事「#6153. 昨朝の朝日サンヤツ広告に『古英語・中英語初歩』と『英語語源ハンドブック』が掲載」 ([2026-03-02-1])
 ・ mozhi gengo さんによる note 記事「#332. 登ってみよう英語史の塔に」(3月4日)
 ・ YouTube 「いのほた言語学チャンネル」動画91年前の市河三喜の名著が新装復刊!【いのほた言語学チャンネル第407回】(3月9日)
 ・ 堀田による note 記事「「英語史の塔」の攻略の仕方」(3月9日)

 この塔は見栄えがよいだけの代物ではありません.そこには,英語史の学び方の提案という意図が乗っています.塔としてご紹介している4冊,すなわち『はじめての英語史』『英語語源ハンドブック』『古英語・中英語初歩』『英語語源辞典』は,有機的に結びついており,どこから学び始めてもいずれは出会うべき運命の書籍です.どれからでも自由に学び始めることができますが,お薦めのルートはあります.それを,note 記事「「英語史の塔」の攻略の仕方」で公開していますので,ぜひお読みください.
 昨年から今年にかけて英語史関連の書籍が複数冊出版されており,英語史を学び始めるのに最適なタイミングとなっています.この春,皆さんも英語史を学び始めてはいかがでしょうか.私も,本ブログや他のメディアを通じて英語史の学び始めをサポートし応援するコンテンツを多く挙げていく予定です.

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
 ・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』 研究社,2016年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.

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2026-03-14 Sat

■ #6165. 月刊誌『英語教育』にて「いのほた連載」がスタート [inohota][youtube][inohota_rensai][hel_education][hel][sociolinguistics][notice][inohotanaze]


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 昨日3月13日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の4月号が発売されました.今月号より,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,新しい連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」が始まっています.
 本連載は,2人で配信している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」から派生した連載企画です.早いもので YouTube での活動も4年を超えましたが,動画でお届けしてきた言葉のダイナミズムや楽しさを,今度は誌面を通じてもお届けしたいと考えています.
 連載の趣旨としては,英語教員の方々はもちろん,英語を学ぶすべての読者の皆さんに,社会言語学と英語史という2つのレンズを通して,英語という言語の奥深い魅力を再発見していただくことにあります.見開き2ページというコンパクトな形式ですが,2人の対談回もあれば,片方がトピックを提供してもう片方がコメントを寄せる回もあるなど,バラエティに富んだコンテンツとなっていく予定です.
 第1回は「言語学・英語学の世界にようこそ」と題し,2人の自己紹介とともに本シリーズの狙いについてお話ししています.社会言語学がどのように私たちのコミュニケーションに関わるのか,あるいは英語史がいかにして現代英語の「なぜ?」に光を当てるのか,そのエッセンスを詰め込みました.
 また,「いのほた」コンビによる出版物としては,昨年10月に『言語学でスッキリ解決! 英語の「なぜ?」』(ナツメ社)も刊行されています.こちらも連載と合わせてお読みいただけますと幸いです.
 英語という言語を,単なる暗記の対象としてではなく,人間が作り上げてきた生き生きとした文化装置として捉え直す.そんな知的な冒険を,毎月の連載を通じて読者の皆様と共有できればと願っています.
 新年度にむけて,英語(史)の世界を深めていきたいという方は,ぜひ毎月13日前後の『英語教育』の連載をお見逃しなく!

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第1回 言語学・英語学の世界にようこそ」『英語教育』2026年4月号,大修館書店,2019年3月13日.42--43頁.
 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 『言語学でスッキリ解決!英語の「なぜ?」』 ナツメ社,2025年.

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