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hellog〜英語史ブログ / 2026-11-05

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2026-11-05 Thu

■ #6401. 「千本ノック」生配信の趣向は学生にどう受け止められたか --- リアクションペーパー77件より [senbonknock][sobokunagimon][voicy][heldio][hel_education][notice]



 昨日の記事「#6400. 久しぶりの「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」 --- 生配信を heldio で公開しました」 ([2026-11-04-1]) でも紹介した通り,10月12日(月)に,Voicy heldio にて「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」 (senbonknock) を生配信しました.大学の「英語史」を履修している学生の皆に事前に寄せてもらった英語に関する素朴な疑問に,会場でマイクと学生たちを前にして,次々と即興で答えていくという趣向です.
 千本ノック後には,いつものようにリアクションペーパーを書いてもらいました.77件の感想に目を通したので,本記事では (1) どの問いに関心が集まったのかを集計して示し,(2) 個々の話題を超えて,千本ノックという授業の形式そのものがどのように受け止められたのかを整理しておきたいと思います(感想の引用は適宜編集・要約しています).

(1) 関心の集まった問い

 「印象に残った問い」として言及された件数を数えてみました(1人で複数の問いに言及している場合もあります).

 ・ Good morning はなぜ「よい朝」ではなく「おはよう」なのか:30件(うち goodbye < God be with ye にも触れたもの15件)
 ・ male に fe をつけると female になるが,この fe は何なのか:23件
 ・ have to はなぜ生まれたのか:22件
 ・ home と house のように,なぜ似た意味の語をわざわざ作るのか:17件
 ・ 日本語には「僕」「俺」「私」「お前」「君」「あなた」などがあるのに,英語はなぜ I と you だけなのか:13件
 ・ 英語にも「男の人っぽい言葉」「女の人っぽい言葉」はあるのか:11件
 ・ custom と customs で意味が大きく異なるのはなぜか:10件
 ・ 船や国をなぜ she で受けるのか:9件
 ・ kind と king で i の発音が異なるのはなぜか:6件
 ・ 一般人称の you について:5件
 ・ キーボードの配列について:3件

 とりわけ上位4つの問いに関心が集中したことがわかります.Good morning については,日本語の「おはよう」「こんにちは」「さようなら」も同じく省略から生まれた挨拶ではないかと,自ら比較を展開してくれた感想が多くありました.female については,fe + male と思い込んでいたものが実は語源的に無関係で,analogy によって形が似てきたにすぎないと知り,「当たり前が覆された」という驚きの声が目立ちました.

(2) 千本ノックという形式について

 今回とりわけ興味深かったのは,個々の話題への反応に加えて,千本ノックという趣向そのものへのコメントが多く寄せられたことです.大きく5つの観点に整理できそうです.
 第1に,ライヴ感です.「即興的な質疑応答が,生放送のラジオを聴いている感じで楽しかった」「生配信で,臨場感があった」と,特別な緊張感と新鮮さを楽しんでもらえたようです.
 第2に,他の受講生の疑問に触れる楽しさです.「他の受講生の疑問を見ているだけでも面白かった」「言われてみれば確かに不思議,というものばかり」という声のほか,自分の投稿した疑問が取り上げられて嬉しかった,皆が同じ疑問を抱いていたことに驚いた,という感想もありました.疑問を持ち寄って互いに鑑賞すること自体に価値があるという点は,以前「#5109. 「千本ノック」公開企画の意外な効用」 ([2023-04-23-1]) で述べた通りですが,今回もそれが裏づけられた格好です.
 第3に,素朴な疑問を発することへの肯定感です.配信の最後に「英語史の観点からは,くだらない質問などない」と私が述べたことに励まされたという感想が複数ありました.また,長く英語を学んできた人ほど,習得の効率のために疑問を無視する術を身につけてしまうので,疑問を取り出す作業はむしろ初学者のほうが有利だ,という話が印象に残ったという学生もいました.
 第4に,問いそのものを問い直す視点です.日本語の「僕」「俺」「私」は一般名詞を代名詞的に用いているにすぎず,英語の I や you と同じ土俵で比べられるものではない,という回答について,問いの前提を疑う視点がおもしろかったという感想がありました.素朴な疑問に答えるとは,ときに問いの組み替えを提案することでもあります.
 第5に,疑問の連鎖です.例えば,ある学生は「疑問が多く解消されながらも同時に多く生まれる千本ノックでした」と書いています.実際,授業後に自ら調べた結果を書き込んでくれた感想が少なくありませんでした.muscle と mouse の関係,trunk の多義,table の意味の発展,good morrow の初出年代を OED で確かめたもの,「さようなら」の語源にさかのぼったものなど,1つの回答が次の問いと探究を生み出していく様子がうかがえます.また,have to の発音の変化を,その場で声に出して確かめられたのがよかったという声もありました.
 一方で,課題も指摘されました.音声が聞き取りづらい場面があった,時間が短く感じられ,取り上げられなかった疑問の答えも知りたい,といった声です.復習用にアーカイヴがほしいという要望もいくつか寄せられましたが,今回の生配信の音源は,冒頭に埋め込んだ通り,11月3日に heldio にてアーカイヴ配信しています.第2弾を望む声もあったので,今後の千本ノック企画の参考にしたいと思います.
 最後に,ある学生の感想を引いておきたいと思います.習ったことを「そういうものだ」と受け入れてしまう体質だったが,これからは一度立ち止まって「なぜだろう」と疑う姿勢を身につけたい,という趣旨です.英語史の学びは,まさにこの小さな「なぜ」から始まります.

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最終更新時間: 2026-11-08 05:00

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